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ポストアポカリプスSF百合ファンタジー「明ける世界の夢見る機械」公式広報ブログにして壕野一廻個人雑記帳

読書記録「地下水と地形の科学 水文学入門」

地学というものには憧れと敬遠の気持ちの両方がある。普段踏みしめている大地がどのようにして成り立っているのかを理解できたら楽しかろうと思うし、創作の種にもなる。その反面、説明を聞いていても「なんとなくわかるが……」みたいな気持ちになってしまい、きちんと理解できた気がしないというのも正直なところ。多分、認知のモデルをきちんと構築できていないのだと思う。

そんな中Kindleのセールで見かけたのがこの本で、専門家がきちんと一般向けに書いた本というのはとてもよい。基礎をしっかり書いてくれているはずなので、何かしら得るものがあるのではないかと思い、読んでみたのでした。

感想

黒部川流域と東京のケーススタディを通じて専門家が基礎的な事実を積み上げて気付くと豊かな知見が広がっているという雰囲気の本で、とても楽しみながら読めた。 先にお断りしておくと、これで水文学完全に理解したわ、というわけにはいかず、特に実データを元にした議論の中にはうまくデータを呑み込めなかった部分も散見されます。これは自分の基礎知識が足りていないためであろう……*1。 とはいえ何も理解できず得るところがなかった、という訳では全くなくて、地下水の動きは結局ポテンシャルによって決定されるという説明には大学でやった流体工学の知識が接続されたようで嬉しかったです。

筆者の書きぶりによれば幾つかの記述については少々論争的な部分を扱っているようでしたが、そうした部分に関してはきちんと留保をつけ、かつあまり派手に宣伝はしない、という部分にも配慮を感じました。

*1:ということにしておけばあまり自分のプライドを傷つけずに済むだけだろう、という批判は甘んじて受けます。多分事実なので