こちらエミーラ通信所

ポストアポカリプスSF百合ファンタジー「明ける世界の夢見る機械」公式広報ブログにして壕野一廻個人雑記帳

夏コミお疲れ様でした & 読んだ本の感想など

夏コミ・コミティアなど皆さんお疲れ様でした。弊サークルはいつも通り楽しく熱い(暑くもある)コミケを過ごすことができました。いらしてくれた皆さん、お手伝い頂いた皆さんにはこの場を借りてお礼させてください。

「あけゆめ」の連載が停滞気味なのは申し訳ない。ここで止める気は毛頭無く、引き続きやっていくつもりなので今しばらくお待ちください。

さて、イベント続きだったので素敵な本ををいろいろと読むことができました。積み本を崩すという遠大な事業は道半ばですが、一旦ここにアーカイブしておこうと思います。

1ツイートで完結しているものたち

私家版近世欧州軍事史備忘録 巻6 定量分析のすすめ

どうしてもふわふわと語られがちな戦闘の勝敗みたいな話題、噂によればランチェスターの法則なんてものもあるらしいけど……。みたいな人に最適なのがこの本。戦闘、ことに前近代の戦いをどう定量的に分析するかについての過去の議論が手広く纏まっていて、著者自身も手を動かして事例適用を試みてくださっています。

本書で紹介されているデュピュイの定量化判定モデル(QJM)は、クラウゼヴィッツ戦争論からの演繹で戦闘を定量化しようというかなり大胆なものです。

読んでいて感じたのは、個別具体の戦場における戦闘能力の発揮効率を表現する係数である戦場変動要素の調整にかなり人の手を加えざるを得ない点が難点であるな、ということでした。

戦場変動要素を考慮しない理論値と実際の戦闘の結果はこう違う。ところで文献によるとこんな出来事があったから、こちらの勢力は戦場変動要素のうちこの部分にこれだけの格差があったと仮定して……よしよし。数字が合いましたね。

みたいな感じになっている。これは議論の叩き台としては決して悪くないと思うのですが、やはり発展途上の感が否めない。

そんな話を友人としていたところ、ベイズ統計学をうまく使えばこの理論はもっと見通しが良くなるのではないかという話題が出ました。どのみち全てのパラメータを決定的に定めることはできないのだから、戦闘の結果や途中経過において生じた出来事などを使ってパラメータのばらつきを少しずつ絞り込んでいく、というようなアプローチは取れないだろうかという考え方です*1

やや辛いコメントに見えたかもしれませんが、QJMに対する批判にも著者は一章を割いていて、よくまとまっているし誠実な本だと思います。それに、デュピュイのモデルに問題があったとしても、このアイディアに基づいて一定の形あるものを作っただけでも偉大なことという感じがする。

この手の議論に興味のある方は是非一読することをお勧めします。

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オリジナル作品は知ってもらわないと本当に知られないので宣伝させてください!弊サークルの夏コミ新刊はメロンブックスさんで大好評委託中!リンク先特設サイトから試し読みもできますので何卒……!

kuzukago-ex-machina.vercel.app

*1:誰かやる気のある人がいたら試してみてください。自分はやる気になったら試してみるかもしれないが、ベイズ統計学をまずちゃんと勉強するところから始めないといけない